結果と考察


A1.典型的ヤブツバキクラスの種 アラカシ・ヤブツバキ・ヤブニッケイ等
 WI90℃以上の暖温帯域を分布の拠点とする種群である。本分布型には,暖温帯域自然植生の標徴種であるヤブツバキも含まれている。
アラカシ(図5)・エノキ・サカキ・テイカカズラ・ノグルミ・ヤブツバキ(図6)
 WI100〜120℃の範囲で,わずかな分布の極大を持っている。アラカシは比較的乾燥に強い常緑広葉樹であるものの,分布の極大は年降水量1200o以上の地域にある。ヤブツバキは特にこの傾向が顕著で,年降水量1200o未満の地域では分布が欠落している。これらの種は,より温暖な地域においても広く分布する種であり,本県におけるWI120℃以上の場所における出現頻度の低減傾向は,年降水量の少なさによるものと考えられる。

a,b:図中の○と棒グラフは各階級における出現数/資料数を示す(図6〜22についても同様)

c:●は分布地,□は推定主要分布地を示す(図6〜22についても同様)
推定主要分布地の条件:海抜20〜380m,年降水量1,240〜1,800o,WI100℃以下
図5.アラカシ Quercus glauca


推定主要分布地の条件:海抜30〜550m,年間降水量1,250〜2,000o
図6.ヤブツバキ Camellia japonica
ネズミモチ・ヤブニッケイ・ネズ・ケネザサ
 分布の極大がWI120℃以上,年降水量1200o未満の地域にあり,降水量の多い地域では劣勢となる樹種と考えられる。分布傾向としては種群A3と似ているが,これより北部まで分布していることから,より耐寒性があるものと考えられる。


 以上の本種群構成種のうち,アラカシ・ネズミモチ・ヤブニッケイ・ネズは,気温条件における北限域では少雨地域に分布し,降水量における北限域では,温暖な地域に分布する傾向が見られる。降水量の多さが分布の制限要因になっているとは考えられないので,豊かな降水量によって他種との競合が激化することが,分布の制限要因となっているものと考えられる。ネズが県北の多雨地域で分布できないのは,まさにこういった要因によるものといえる。
ハゼノキ
 WI120℃以上,年降水量1200o未満の地域における分布の極大が顕著で,種群A3に近い分布傾向を示している。
モチノキ
 岡山県においては,もともと分布が少なく,出現した資料も4件にすぎない。従って,適切な分布傾向を得ることができたとはいいにくいものの,現時点では,降水量に関してはヤマモモ(A2)に酷似した傾向を持っていること,気温条件に関してはヤマモモよりもさらに耐寒性を持っていること,アラカシ・ネズミモチ等と比べると,北限域では比較的降水量が少ない地域に分布すること等の特徴を挙げることができる。


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岡山県における植物分布要因の解析
出典:難波靖司・波田善夫,1997.岡山県自然保護センター研究報告(5):15−41.
最終更新日:2000/07/07