結果と考察


C1.典型的冷温帯の種 ブナ・ミズナラ等

 本種群は,WI90℃未満の地域に分布が見られ,極大はWI80℃未満の地域にある。県下の冷温帯域における代表的な樹種である。

ブナ(図21)

 岡山県におけるブナは海抜800m以上の寒冷地域で優勢であるが,海抜560mの地点でも遺存的な分布が報告されている(西本・地職,1996)。


推定主要分布地の条件:海抜800m以上,年間降水量2,100o以上,WI80℃以下

図21.ブナ Fagus crenata


ミズナラ(図22)・サワグルミ・ムラサキマユミ・ハイイヌガヤ・ナナカマド・ツリガネツツジ・ハウチワカエデ・イタヤカエデ・オオカメノキ・ツルアジサイ

 分布の極大は概ね800m以上の地域にある。年降水量では2000o以上の地域に分布の極大を持つものが多い。ブナに比べるとやや低海抜地まで生育が見られ,400mのあたりまで見られる種もある。


推定主要分布地の条件:海抜600m以上,WI90℃以下

図22.ミズナラ Quercus mongolica ssp. crispula


ダイセンミツバツツジ・エゾユズリハ・アサガラ

 年降水量に対する分布の極大が2400o弱の地域にあるが,これは,これらの種の分布の拠点が,いずれも県北西部(真庭郡以西)にあることに起因している。極大を示す階級が異なるのは,県北西部と北東部の降水量の差があらわれたものではあるが,いずれにしても十分な降水量であり,これが分布要因とは考えられない。狩山(1989)はダイセンミツバツツジの分布が,蒜山地方に多いことを指摘しているが,これらの種も同様に地史的な分布を示しているものと推察される。同様に年降水量2400oで分布の途切れるヤマグルマ・ミズメについても県北西部を分布の拠点としている。

アズキナシ

 WI70℃未満の地域に分布の極大を持つことから本分布型含めたが,県下では中部で分布を欠き,南部で再び分布が見られるという,やや特殊な傾向を持っている。解析に使用した地域フローラ資料には含まれていないが,県南東部の牛窓町沖にある前島にも分布がある。また,岡山県(1996)では北木島にも分布が記されている。南部における分布は岡山市金山(標高499.5m)山系,倉敷市陶地区弥高山(標高307.6m)山系一帯に集中して見られる。冷温帯に分布の拠点を持つ樹種の中には,暖温帯域においても最終氷期の頃の残留分布が見られるものがあり,アズキナシに関しても,県南では最高峰にあたる上記山系に残留的な分布があったのではないかと考えられる。

ヤマグルマ・ミズメ・ミズキ・ハクウンボク

 WI70〜80℃の地域に分布の極大があり,他とやや分布傾向が異なっている。ヤマグルマは,県下では,冷温帯の森林中に生育することはなく,脊梁の麓にあたる地域の渓畔等を主な自生地としている。こういった地域は冷温帯南縁から中間温帯にある。ミズメ・ミズキはいわゆる陽樹で,やや先駆的な要素もあわせ持っている。

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岡山県における植物分布要因の解析
出典:難波靖司・波田善夫,1997.岡山県自然保護センター研究報告(5):15−41.
最終更新日:2000/07/07