結果と考察


3.分布型と自然緑化

 大規模開発等においては周囲の生態系と調和した,自然性の高い緑化が課題となってきた。自然性の高い緑化を実施するためには,その対象となる地域の自然に関する情報収集と理解が必要である。今回の分布型は,自然回復に使用する樹種の選定に利用することができると考える。

 自然性の高い緑化に関しては,極相林構成種等が選定されることも多いが,教科書的な全国一律の樹種が選定される傾向が高く,地域の特性や立地の性質を勘案したものとはなっていない。特に,岡山県の沿岸部を中心とした温暖少雨を特徴とする地域においては,気温のみによる単純な対応では適切な樹種を選定することは困難であり,降水量等の水分条件を大きな要素として考慮する必要がある。

 今回の解析は,様々な地形条件や水分条件等を包含した地域のフローラ資料をもとに行ったものである。従って,実際の生育地は,肥沃な土壌地である場合もあれば,露岩地や尾根部等の痩悪林地である場合もある。また,データ的には,人為は加わっているものの,自然状態に近い状態から得られたものであり,それなりに土壌も形成された立地での,他の植物との競合関係下における分布であることも見逃せない。

 現実の植栽に際しては,これらの気候的条件を満足すると同時に,地形的或いは土壌的条件に留意した種・植生の選定がなされる必要がある。公園木のように十分な土壌改良を行い,競合関係の少ない条件で植栽するのならば,適切と判断される地域以外でも生育させることは可能である。しかしながら,自然性の高い森林を再生することが目的であり,粗放的管理が前提であれば,その地域における適合種による森林回復がなされるべきであろう。気候的条件を満たしていても,切り土法面等のような,土壌が形成されていない立地では生育できないわけである。

 植栽木の選定に際し,特に降水量の少ない瀬戸内低海抜地においては,降水量に対する分布傾向に留意するとともに,降水量に対して敏感に反応する種に関しては,十分な水分条件を備えている立地に植栽することとしたい。降水量が1400oを下回る地域においては,スダジイ・タブ等の自然分布は強く制限されており,良好な水分条件の保証がなければ,長期的に生育することは困難と考えられる。

 岡山県地方気象台(1991)の観測データでは,過去に600oを下回る渇水年が記録されている。また,ほぼ10年に一度は800o前後の渇水年が繰り返されており,その度毎に街路や公園等に植栽された樹木の相当数が枯損する事態が発生している。スダジイ・タブ等の沿岸低海抜地における分布の欠如傾向は,このような異常年における被害であると考えられ,植栽に際しては,長期的観点からの樹種選択が必要である。

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岡山県における植物分布要因の解析
出典:難波靖司・波田善夫,1997.岡山県自然保護センター研究報告(5):15−41.
最終更新日:2000/07/07